(8)非行カウンセリングに関連して
2006.12.05 Tuesday 01:41

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(8)非行カウンセリングに関連して

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非行カウンセリングについて,同業の後輩からたずねられると,次のような本を推薦している。

 精神分析的な立場からは,まず「心理面接のノウハウ」(創元社)の「非行面接」(藤田裕司)が読みやすく濃密で,示唆に富んでいる。さらに詳細な事例こみで読みたいということであれば「非行の病理と治療」(金剛出版,石川義博)を挙げている。
 また家族療法,システムズアプローチの立場からは,まず「非行臨床の実践」(金剛出版)の村松論文,生島論文を勧めている。
 非行カウンセリングとしてはかなり手ごわい「窃盗」少年の理解やカウンセリングについて,さらに上級技になる「放火」や「性」非行少年のそれについては,まだ満足できるような本にはめぐり合っていない。窃盗全般ではないが「ひったくり」であれば拙著「現代ひったくり事情」(新曜社)は読むと「目からうろこ」的な感動があるかもしれない。「性非行」については,日本人ではないが,精神科医ストーの「性の逸脱」(理想社)は,男性としての劣等感や無力感をきちんと扱い、性非行の本質をつかんでおり,理解に役に立つ。
 なお非行関係の本をほとんど読んだことがない人から、「概説・入門書」の紹介を求められた際には、一番新しいものを紹介するようにしている。今は、平易な文章で、かつ比較的安価であるという条件も考慮し、「現代の少年非行」(大日本図書、950円)の名を挙げることが多い。

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(7)特定の心理技法解説型
2006.12.05 Tuesday 01:39

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(7)特定の心理技法解説型

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心理技法というのは,あるいはその技法の解説者というのは必ず背景を持っている。それが非行臨床である場合には,その解説書が,非行に無関心で,普遍的な解説を狙っていたとしても,読み手が非行に関心を持って読むと,とたんに非行をみずみずしく映し出してくれるユニークな臨床の本になる。

▼「ロールレタリング」   (春口徳雄、創元社、1987)
 他人と自分の双方の視点に立って、双方から交互に手紙を書いていく方法を役割交換書簡法と呼び、カタカナ言葉ではロールレタリングと呼ぶ。日本の少年院の教育実践の中から生まれた技法で、今でも多くの少年院で実践されている。この本は本技法の説明を幅広く行っている解説書であるが、出てくる事例は非行中心であり、非行の指導を考える上で示唆に富んでいる。ちなみにこの本の234頁の手紙を書いたのは社会人3年目のういういしかった私です。なお先の「矯正・保護カウンセリング」の中でのロールレタリングの項目があり、そこでは同じ著者によるコンパクトな解説記事が読める。

▼「心理面接のノウハウ」   (氏原寛、東山紘久、岡田康伸編、誠信書房、1993)
 子ども面接、思春期女子面接・思春期男子面接、といった具合に8つの領域の面接の構造と留意点を扱った記事が続く。書名とは裏腹に、ノウハウでなく実に本質的で掘り下げた内容が扱われていると思う。それぞれがコンパクトな文量で圧縮されている。その中で7章が「非行面接のノウハウ」(藤田裕司)になっている。執筆者は鑑別所の技官経験者で、私も入れ違いで同じ施設に勤務したことがあるので、その熱心な実務家時代を職場で聞いたことがある。きちんと権威構造を説明しているし、陰性感情や見捨てられ不安といった概念を、実にカウンセリング場面でどう扱うのか、実際的な要領と助言に満ちている。個人非行カウンセリングを真剣に実践されてきた方なのだとしみじみ思う。ほかに境界例面接や親面接、学校カウンセリングといった章もあり、参考になる。
 なおこの本の1年前、「心理臨床家のための119冊」(創元社、1992)という書籍が出ているが、その中の非行ジャンルのテーマ解説を同じ藤田裕司氏が行っている。短文であるが、非行面接の問題提起をぴりりと行っている。ちなみに、紹介・解説されている本は「非行の病理と治療」(金剛出版)、「非行をどのように治すか」(誠信書房)「矯正・保護カウンセリング」(日本文化科学社)「「非行」が語る親子関係」(岩波書店)の4冊である。また、内容を取りあげられないものの、定評ある名著として書名だけ上げているのは「増補非行臨床心理学」「非行少年の解明」「非行臨床」「非行少年の事例研究」「日本型少年非行」の5冊である。紹介書籍は、「精神分析的オリエンテーション」中心であり、90年代初頭の非行臨床の状況をよく反映している。

▼「描画テスト・描画療法入門」   (藤掛明著、金剛出版、1999)
 この本は非行のための本ではなく、あくまでも描画一般の解説書である。しかし、非行臨床での事例を満載しているため、結果的に非行カウンセリングの観点から読んでもいろいろと発見があると思う。例えば「素顔に触れるとき」では、家出売春少女と恐喝少年の面接事例が、「キレる若者と描画療法」では、分裂病型人格障害の凶悪非行の事例が扱われている。本書の「背伸びの息切れ」という観点から読み直すといずれも典型事例ともなっている。


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(6)事例カンファレンス型
2006.12.05 Tuesday 01:37

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 (6)事例カンファレンス型

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 複数の専門家の協議というのは迫力がある。また文章言葉にはない余韻やニュアンスも伝わってきて、感じるところ大である。ところがそうした逐語づくりの書籍となるとぐっと少なくなるが、いずれも力作である。

▼「非行少年の事例研究」   (吾妻洋編、誠信書房、1973)
吾妻洋氏が若手の家裁調査官たちとの文献購読会を指導し、いつしか非行事例の検討もするようになった。その際の協議を逐語録風にした書籍である。もっとも事例は5つしかなく、生活史と非行と心理テストをかなり詳細に扱っている。TATの解釈などは図版ごとに行っている。事例検討に先立ち、理論編として、「生活史研究の要点」「非行研究の要点」という2つの章が設けられている。

▼「非行と家族療法」   (団士郎ら共著、ミネルヴァ書房、1993)
 当時京都府下の児相関係者5人が実際の5つの相談事例を面接の逐語を織り交ぜながら紹介し、各事例の最後には「ディスカッション」として、5人の著者らの事例協議がやはり逐語風に掲載されている。内容は家族療法をベースに「児相で扱う非行事例」に取り組んだもので、一般の人が読んでも、専門家が読んでも面白い。臨床実感に満ちている。たとえば非行事例の終結について、登校拒否と比較し、登校拒否は「静」であり、再登校など「動」に至るプロセスをたどるが、非行の場合は、極めて「動」であり、問題解決に至ったとき「静」に転じるという指摘がある(204頁)。著者らが児相というフィールドで、「静」的な問題行動と「動」的な問題行動の双方に取り組んできたからこそできるなかなか鮮やかな対比だと思う。



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(5)トピックス型
2006.12.05 Tuesday 01:35
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(5)トピックス型

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総覧的な書もいいが,私の好みとしては曖昧模糊とした臨床の営みを一つの論点で読み解いてくれるような一点重視の書のほうが好きだ。本当に鋭い指摘であればあるほど,応用の利く,日々の臨床に参考になるものが含まれている。

▼「うらみの心理」   (郷古英男著、大日本図書、1978)
 この「うらみ」の心理はトピックス型の典型的な書になると思う。著者の家庭裁判所調査官としての実務の実感の中で生み出され,肉付けされた概念である。
 私はこの書の存在は知っていたが,文化評論のようなものと勝手に判断して読もうとする気持ちは長らくなかった。しかし先の「非行臨床の実践」の村松励氏の記事のなかに,この恨みの心理を手際よく解説した個所があり,実に臨床的な指摘であることを知り,急いでこの本を手にしたのだった。読んでみると,「うらみ」の心理とは,相手の仕打ちを不当と思いながら表立ってやり返せず,相手の本心や出方をじっとうかがう」心理であり,甘えと不可分で,受動性を特徴とするという。私が本書で述べた「いじっぱり」の心理とかなりの部分で面白いように重なる概念であった。終章の「「うらみ」からの回復」がわずか数頁で,精神分析療法と内観療法の可能性の示唆で終わっているのは肩透かしをくった感じがした。ただ,この書は著者45歳の時の上梓であり,「うらみ」の心理は,この後に本格的に展開され,体系化されるはずであった。が,残念なことにこの数年後,前述の「日本型・少年非行」の発刊直前に若くして著者は他界している。

▼「非行」が語る親子関係」   (佐々木譲,石附敦著。岩波書店、1988、新装版1999年)
この本は、家裁調査官が実務の中で非行少年とその親とかかわった経験を、少年の立ち直りの特徴から「対決」「休止」「離別」「出直し」「出会い」「修正」と名付けて解説していくのだが、とにかく事例がいい。たんたんと記述しているが、事例が語ってくれるような力がある。読んでいて実務家の私でなく、親としての私が揺さぶられる余韻がある。また事例や解説の合間のちょとしたフレーズも、日ごろよく感じていることをさりげなく指摘してくれる。例えば「少年たちは、一番気になることを気にかけていないふりをすることがある。解決できそうにないようなむずかしい問題を抱えた少年がよくとる態度である。」という具合に。「序にかえて」や「あとがき」を読むと河合隼雄氏から指導を受けたとあるが、そういわれると、事例や文章に無駄がなく、しかも余韻があるあたりは、河合隼雄節に似ているような気がする。

▼「現代ひったくり事情」   (藤掛明、産経新聞大阪本社社会部取材班共著、新曜社、2000)
産経新聞大阪本社版社会面に長期連載された「アカン許さんひったくり」を分量を半分くらいに減らして再編集したものと、私のひったくり少年たちとのかかわりを記述したものとを合わせたもの。合わせたといっても記者と私の文章が交互に同じテーマで登場するので一つの流れで読める。なぜひったくりが全国で激増したのか。少し前までは大阪でだけ多かったのか。罪責感の乏しさの魔力はなにか。いかにひたくり非行から卒業するか。ひったくり少年のアセスメントとカウンセリングの実践報告としてユニークな出来になったと思う。ちなみにここで書いたひったくり非行記事を、ダイジェストしたものが「非行の理由」と本書の第4章の記事である。


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(4)概説・専門型
2006.12.05 Tuesday 01:33
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(4)概説・専門型

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非行領域全般を扱う専門書がある。多くは体系や類型を意欲的に提起する実力派ぞろいの頼もしい書籍群である。

▼「非行少年の類型」   (高橋雅春著、文教書院、1970)
 この書は非行理論の平易で教科書的な解説を終えると,後半(第4章)では文字通り非行少年の臨床心理学的類型を12に絞り,実務家ならではの具体性で紹介している。著者は若い頃、少年鑑別所の技官としての実務経験を積んでいるが,そこでの鑑別(診断・査定)の枠組みをそのまま示しているような明快な内容である。
非行は,集団か単独か,一過的か反復常習的かで,また攻撃的かそうでないか等で,様相がかなり異なってくる。実務家であればごくごくあたりまえの,自然と体得するような判断枠を,ていねいに説明してくれるようなところがあり,非行専門の司法臨床家というよりは,非行に不慣れな一般のカウンセラーにはもってこいの目ならしの書ではないかと思う。この高橋類型は,現代でも十分に使える内容であるが,入手はできない。もし現代最新版として,実務家のどなたかが新たに同様の類型ものを書いてもらえるといいのになあと私は真剣に思っている。

▼「増補非行臨床心理学」   (水島恵一著、新書館、1962、増補1971)
 非行臨床を体系的総覧的に扱った古典的な名著。臨床心理家が非行に絞って、それも専門書として世に出したのは、このころとしては珍しく、圧倒的な存在感を示し,その後の多くの論文で文献として登場する書でもある。著者は若き日に少年鑑別所や児童相談を経験している。内容は、理論から臨床、診断から処遇に至るまで、当時の文献を網羅させ、膨大な内容をまとめたもので、内容に極端な偏りもなく、かといって著者の臨床実務家としての個性も含まれている。非行類型を,急性非行,人格性非行,神経症的非行,不適応性非行,感応性非行,習慣性非行の6つに分けて,説明も臨床的である。「非行少年の解明」(新書館、1964)がこの書の続編として発刊された。なお、これらは現在絶版になっているが、同じ著者による2冊のダイジェスト的な内容(それでもかなりボリュームがあるが)として「非行・社会病理学」(人間性心理学大系第8巻)の第2部「非行臨床」(大日本図書、1987)で読むことができる。

▼「非行臨床・実践のための基礎理論」   (井上公大、創元社、1980)
著者は家裁調査官出身の方である。書名の「臨床」は「研究」に対比したもので、非行問題の諸問題を臨床的観点から解説を試みたもので、密度の濃い著作である。「非行臨床実践上の諸問題」以降は特に濃い。井上氏は、少年補導(現、月刊少年育成)誌に「非行研究ノート」という連載記事を担当し、それを基にこの著述をまとめられた。私の最初の単著「描画テスト・描画療法入門」も、この同じ雑誌の連載をまとめたもので、連載開始時に編集者から井上氏の「非行臨床」も当誌連載がまとまったものですよと言われ、大いに発憤したのを覚えている。

▼「非行の病理と治療」   (石川義博著、金剛出版、1985)
 著者は医療少年院,医療刑務所の医師の経験がある。精神療法的な立場に立った専門書として多くの専門家が愛読し,よく引用されている。もともと,司法システムでは多くの機関に分業化されており,一貫した事例の追跡や治療が難しい。いきおい査定・診断や,特定分野の指導報告に偏りがちである。また面接や指導の前提に司法の権威構造がある。そのために,司法外の臨床家や,同じ司法内でも他の部署の者からみると,せっかくの専門書もどこか参考になりにく感じが残る。しかしこの本は医師としての立場を最大に生かし,また司法ケース,病院ケース双方の事例をも対象として,症例報告のスタイルで詳細に事例の終結まで関わりながら考察を行っている。そのため,多くの臨床家,とりわけ司法外の,また事例を治療的,指導的に最後まで関わろうとする臨床家に,共感を呼ぶ内容となっている。また非行少年観や治療観を問題とし,「彼らの態度の奥深くに,苦悩に満ちた声なき訴えや甘えのかすかな呼びかけを察知できるかどうか」「治療者が非行少年の立ち直りと自立する可能性を信じ,人間的な出会いを求めつつ,たゆまぬ語りかけを続ける覚悟ができているかどうか」という2つの問いかけ(243頁)を行っている。この治療技術以前の治療者の姿勢を問う石川節も,さらに多くの共感を呼んでいる。なお,同じ著者による共著本で,病院外来でチームで対応した登校拒否や家庭内暴力の症例報告「思春期危機と家族・登校拒否,家庭内暴力のチーム治療」(岩崎学術出版,1986)があり,ここでも石川節を味わえる。

▼「非行少年への対応と援助〜非行臨床実践ガイド」   (生島浩著、金剛出版、1993)
著者は当時保護観察官であり、時に過激な表現で、非行臨床の現場に向けてカンフル注射を打つような熱意がくみ取れる。内容は家族療法の精神を貫き、しゃにむに保護観察官の実務をこなしながら考えたもので、読んでいて説得力がある。それまでの精神療法中心の非行解説の流れからすると、家族療法や家族療法的な働きかけが隆盛していく最初の突破口的な位置にある本だと思う。同じ著者による「悩みを抱えられない子どもたち」(日本評論社、1999)は、同じ様な論旨ながら、もう少し一般的でマクロな視点が加味されている。

▼「子どもの心理臨床」(体系20巻)   (安香宏、村瀬孝雄、東山紘久編、金子書房、2000)
 金子書房の強力な基本全集。この巻には「非行」と「性的逸脱」の章で、非行が扱われ、矯正、家裁、警察、児相等の実務経験のある6人の記事が読める。他の巻では、「適応障害の心理臨床」(体系10巻)が役に立つ。「学校不適応」、「非行」、「薬物依存」等の章がある。なお、編者の一人である安香宏氏による家族周期論からみた「非行と家族」(「家族の人間関係(11)各論・講座人間関係の心理2」に収録、ブレーン出版」)も秀一。



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(3)総登場型
2006.12.05 Tuesday 01:31
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(3)総登場型

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非行は組織が異なり「足場」が違うと,とたんに見える風景が違ってくる。それならばいっそうのこと各組織,各風景の人にひととおり登場願って,総花的に合作してしまいましょう,という話になる。応用や非行臨床に普遍的な体系を模索するには難があるが,とりあえず確実に役に立つ。時に自分の足場に一番近そうな章を読んだり,時に百科事典のように読んだりする面白さもある。

▼「矯正・保護カウンセリング」(実践カウンセリング4)   (遠山敏編、日本文化科学社、1990)
 カウンセリングの一般原則を扱う本はいくら読んでみても、非行臨床ではどうも通用しそうもない。ならば、正反対にそれぞれの司法機関の業務に密着して具体的な実践や技法を個々に紹介してしまうのはどうか。そうした総登場型の精神で編まれた,手堅い本である。扱う領域は矯正と保護。「矯正」というのは、法務省矯正局が所管している施設を指す総称で、少年鑑別所、少年院、刑務所等を指している。また「保護」とは同じく法務省保護局所管の保護観察所等を指している。編者は、「矯正」で心理技官等を経験している遠山敏氏。執筆者には矯正や保護の実務家が多数参加している。書名の「カウンセリング」という概念を広げ、実際には広義の心理療法を多く扱っている。特に編者の遠山氏の文章は一皮むけた内容で、実務の実践を扱いながらも普遍的なヒントに富んでいる。なお、この書籍と同じようなまとめ方で、あまり知られていないが「矯正処遇技法ガイドブック第1分冊,第2分冊」(矯正協会、1991)がある。こちらは矯正施設で行われている諸技法をこれでもかと大量にとりあげ、ばりばりの実務家が解説している。

▼「司法心理臨床」(心理臨床プラクティス第5巻)   (竹江孝・乾吉祐・飯長喜一郎編。星和書店、1991)
 編者は大学教官と少年センター(警察)の実務家。先の「矯正・保護カウンセリング」が実務サイドに密着することで有用性を増すことができたとすれば、この本はさらにその実務領域を最大限に広げてしまったもの。見た目も分厚い。実務家が見事なほどに総出演し、分担執筆をすることで、多岐にわたる関係各機関の活動内容がわかり、かつ司法システムの俯瞰的な理解までもが得られる。また執筆者の迫力や熱気も感じられる。そうした総出演型の老舗の本ではないかと思う。私がこの本の中で教えられたのは、編者の一人である乾氏の「司法臨床への疑問と関心」の記事である。疑問については),慮⇔呂鯒愀覆砲靴疹況と心理臨床活動とは矛盾した設定ではないか。∋碧,離▲札好瓮鵐箸篌N鼎呂匹里茲Δ瞥論や体系があるのか、抵抗の処理はどうするのか。といった、病院臨床から見た本質的な疑問を挙げている。本書「非行カウンセリング入門」は私なりの疑問への回答である。また、氏は司法心理臨床の実践が、心理相談の基本的枠組みを指し示すとして‖亰茲鉢中立性を挙げている。まさにそのとおりであると思う。

▼「非行臨床の実践」   (生島浩・村松励編、金剛出版、1998)
 編者は保護観察官と家裁調査官。他の執筆者は多岐にわたる分野の実務家が参加し、総出演型の入門書であり、実務家のための実践報告書でもある。先の「司法心理臨床」の流れを汲むが、非行臨床の独自性をより打ち出し、事例や実践報告的な要素が増えている。また家族療法の訓練を受けた新世代の臨床家が編者2名を中心として存在感を示している。ちなみに私は「心理テストによる診断と援助〜少年鑑別所における短期面接から」という記事を執筆。「やせ我慢・背伸び」論と描画テストを使った面接例を紹介した。個人的には村松励論文には特に共鳴し、幾度も読み返し勉強させていただいた。

▼「ケースファイル・非行の理由」   (村松励、生島浩、藤掛明編、専修大学出版、2000)
入門書ではあるが、事例検討が中心であり、それも現代的な目新しい非行を中心に選んでいるところに特徴がある。親父狩り、校内暴力、殺人、強制わいせつ等16の記事が続く。執筆者も各分野の実務家の総出演型になっている。私も「激増するひったくり非行」と「キレる少年のカウンセリング」の2つの記事を担当している。



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(2)概説・入門型
2006.12.05 Tuesday 01:29
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(2)概説・入門型

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非行の統計や時代推移,はたまた各種非行態様の解説や司法システムの解説など,幅広く,かつ平易に扱う入門書群がある。入門書とはいえ,本ごとに,指導に役に立つ指針を盛り込んだり,将来の非行問題を予見してみせたり,意欲的,個性的な内容が含まれている。

▼「新訂非行少年の心理」(現代心理学ブックス)   (樋口幸吉著、大日本図書、1963、新訂1974)
非行少年の心理を扱った入門書としては古典中の古典。非行以前の段階の「親に反抗する子」や「学校へいきたがらない子」などといった問題行動から放火や殺人に至るまで幅広く扱い、それぞれについて原因や導き方を平易に語っている。著者は精神科医にして矯正の草創期の中心的な人物のひとりとして活躍した人。私は就職した年にこの本を購入し読んだが、その時点で新訂23刷であった。一般向け入門書としてするすると読める。

▼「非行少女の心理」(現代心理学ブックス)   (松本良枝著、大日本図書、1980)
女子非行の総覧的な入門書。著者は最初の女性少年鑑別所長になった人でもある。事例も豊富で、多種類の非行を解説し、原因論から人格特徴まで広範囲の事柄を手際よくまとめている。この本の後継本として同じ著者、同じ出版社の「少女の非行と立ち直り」(1995)がある。それにしても大日本図書の新書(現代心理学ブックス、NEW心理学ブックス)はコンパクトな非行関連の入門書を輩出していて鮮やかである。

▼「日本型・少年非行〜青年の危機と成長」   (森武夫・郷古英男編、創元社、1982)
 家裁調査官やその出身者のグループによる意欲作。入門書にして専門書、概説書にして個性本。前半が森武夫氏が、非行を危機に対する反応の一つととらえ、青年期危機から非行を解説している。私が非行を適応努力の一種としてとらえているのと本質的には重なり、肌ざわりのいい論考である。また窃盗、暴走族等の非行種別の解説も続いている。後半は、郷古英男氏の編集で、書名にもあるように「日本型」を意識し、甘え、恨み、被害者意識、意地といった問題を扱い、最後は坪内順子氏の「女性の人生危機」で締めくくっている。いずれも意欲的な論考が続くが、特に坪内論考は、少女の危機を初潮、初交、妊娠出産でとらえたり、娘の思春期危機と母の中年期危機が重なっていることを指摘するなど、臨床的な深さに圧倒される。

▼「現代の非行」   (台利夫、屋久孝夫編、教育出版、1983)
上記の「日本型・少年非行」の翌年、鑑別所技官とその出身者と家裁調査官らが加わり、やはり意欲的な入門書が出た。上記との比較においては、こちらのほうが一般的で概説的であると思う。非行の心理やパーソナリティーの解説に始まり、現代の(もちろん当時としての現代)の非行の態様別の解説と指導が中心をなし、最後の章では司法システムや関係機関の概覧を行い、学校での生徒の懲戒について法的に扱っている。個人的には坪内宏介氏の2章「非行少年のパーソナリティと発達」は、矯正施設の実務経験に織り込んで少年たちのパーソナリティの特徴を指摘しており、教科書的でない説得力があって、当時感銘を受けた。

▼「非行〜悪に魅せられる少年少女」   (新田健一著、金子書房、1986)
平易に非行の心理について解説している本である。著者は少年鑑別所技官出身で,ちょうど少年鑑別所で行われている心理アセスメント等の実務に即して次々に紹介してくれる趣がある。新田氏らが開発した「非行性深度判定徴表」(1977)も1頁に表のみであるが掲載されている。これをみると非行性の深まっていく度合いがリアルに概観できる。ちなみに女子版としては坪内順子氏によるもの(1979)があり、先の「日本型・少年非行」や「現代の非行」に掲載されている。

▼「現代の少年非行〜理解と援助のために」(NEW心理学ブックス)   (萩原恵三編、大日本図書、2000)
総覧型の入門書である。共著であるが、それを感じさせない全体のまとまりがある。著者は編者も含め3人いずれもが少年鑑別所の技官である。同社の古典「非行少年の心理」の後継本で、その大役を十分に果たしていると思う。指摘も断定的でなく、随所に臨床実務家としての良識とセンスを感じさせてくれる。

▼「少年非行の世界〜空洞世代の誕生」(ゆうひかく選書)   (清水賢二編、有*ひ閣、2000)
入門書とくくりきれない意欲的な本である。時代の分析もし、現代を空洞世代と名付け、21世紀の非行の予見までしている。一方で各論の初発型非行、暴力、性、薬物、いじめの各記述は事例も挿入し、なかなか臨床実務的な解説になっている。編者は「少年問題についていま語り合うことのために必要な基礎資料となることを願って」この本を編んだと述べている。編者は元科学警察研究所研究員で、執筆者は家裁、警察関係者が中心である。




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実務家の書いた非行臨床の本(はじめに)
2006.12.05 Tuesday 01:27
実務家の書いた、非行臨床の本

* HP「おふぃす・ふじかけ」の「実務家の書いた、非行臨床の本」コーナーを、この   blogに移築しようと思います。

(1)はじめに 

一口に非行臨床、非行カウンセリングの本といっても、さまざまな職域があり、それぞれに切り口がかなり違う。また、社会学的、評論的要素の強い本も多く、そうしたものは臨床からはかなり離れた印象を受ける。また病院などでの臨床で養われたカウンセリングや指導の原則をそのまま移植したかのような本も多いが,どうも実情や必要から離れているように感じる。
 ここでは非行の実務家や元実務家が書いた書籍に限って、私自身が何らかの意味で役に立ち、印象に残っているものみを紹介することにして、非行臨床や非行カウンセリングの実践を試みる方々の参考に供したい。
 もちろんここに紹介したもの以外にも、私がたまたま手にしていないだけで良書はたくさんあるだろうし、ここに紹介する書籍の著者たちの多くは、学会や実務の中でお会いしたことのある方なので、その人柄ゆえに実際の文章内容以上に感銘を受けていることもあるかも知れず、客観的な紹介になっていない可能性もある。
 しかし、ある程度主観的な紹介のほうが、情報に角度が付いて、興味深いこともある。同業の先輩から勧められた本はたいていの場合、大当たりであり、読む前からその先輩の前口上につられてどきどきして読み始めることが多い。ここでは、そうした先輩の「前口上」の精神にのっとって気ままに紹介することにしたい。
 書籍は一応おおざっぱなかたまりに分け、その中では発刊順に紹介している。また取り上げた本の一部はすでに絶版になっているものもあるが、図書館等の利用も可能であることから外していない。
ちなみに,ここで紹介した幾冊かは,かつて読んだことがあっても今は所有していない絶版本であった。そのため,再度読み直そうとしてインターネットで検索し,古本として購入した。サイト名は「日本の古本屋」(http://www.kosyo.jp/ )で,私は意中の本2冊をこのサイトの検索で鹿児島市のとある古本屋から瞬時に購入することができた。



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