(2)概説・入門型
2006.12.05 Tuesday 01:29
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(2)概説・入門型

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非行の統計や時代推移,はたまた各種非行態様の解説や司法システムの解説など,幅広く,かつ平易に扱う入門書群がある。入門書とはいえ,本ごとに,指導に役に立つ指針を盛り込んだり,将来の非行問題を予見してみせたり,意欲的,個性的な内容が含まれている。

▼「新訂非行少年の心理」(現代心理学ブックス)   (樋口幸吉著、大日本図書、1963、新訂1974)
非行少年の心理を扱った入門書としては古典中の古典。非行以前の段階の「親に反抗する子」や「学校へいきたがらない子」などといった問題行動から放火や殺人に至るまで幅広く扱い、それぞれについて原因や導き方を平易に語っている。著者は精神科医にして矯正の草創期の中心的な人物のひとりとして活躍した人。私は就職した年にこの本を購入し読んだが、その時点で新訂23刷であった。一般向け入門書としてするすると読める。

▼「非行少女の心理」(現代心理学ブックス)   (松本良枝著、大日本図書、1980)
女子非行の総覧的な入門書。著者は最初の女性少年鑑別所長になった人でもある。事例も豊富で、多種類の非行を解説し、原因論から人格特徴まで広範囲の事柄を手際よくまとめている。この本の後継本として同じ著者、同じ出版社の「少女の非行と立ち直り」(1995)がある。それにしても大日本図書の新書(現代心理学ブックス、NEW心理学ブックス)はコンパクトな非行関連の入門書を輩出していて鮮やかである。

▼「日本型・少年非行〜青年の危機と成長」   (森武夫・郷古英男編、創元社、1982)
 家裁調査官やその出身者のグループによる意欲作。入門書にして専門書、概説書にして個性本。前半が森武夫氏が、非行を危機に対する反応の一つととらえ、青年期危機から非行を解説している。私が非行を適応努力の一種としてとらえているのと本質的には重なり、肌ざわりのいい論考である。また窃盗、暴走族等の非行種別の解説も続いている。後半は、郷古英男氏の編集で、書名にもあるように「日本型」を意識し、甘え、恨み、被害者意識、意地といった問題を扱い、最後は坪内順子氏の「女性の人生危機」で締めくくっている。いずれも意欲的な論考が続くが、特に坪内論考は、少女の危機を初潮、初交、妊娠出産でとらえたり、娘の思春期危機と母の中年期危機が重なっていることを指摘するなど、臨床的な深さに圧倒される。

▼「現代の非行」   (台利夫、屋久孝夫編、教育出版、1983)
上記の「日本型・少年非行」の翌年、鑑別所技官とその出身者と家裁調査官らが加わり、やはり意欲的な入門書が出た。上記との比較においては、こちらのほうが一般的で概説的であると思う。非行の心理やパーソナリティーの解説に始まり、現代の(もちろん当時としての現代)の非行の態様別の解説と指導が中心をなし、最後の章では司法システムや関係機関の概覧を行い、学校での生徒の懲戒について法的に扱っている。個人的には坪内宏介氏の2章「非行少年のパーソナリティと発達」は、矯正施設の実務経験に織り込んで少年たちのパーソナリティの特徴を指摘しており、教科書的でない説得力があって、当時感銘を受けた。

▼「非行〜悪に魅せられる少年少女」   (新田健一著、金子書房、1986)
平易に非行の心理について解説している本である。著者は少年鑑別所技官出身で,ちょうど少年鑑別所で行われている心理アセスメント等の実務に即して次々に紹介してくれる趣がある。新田氏らが開発した「非行性深度判定徴表」(1977)も1頁に表のみであるが掲載されている。これをみると非行性の深まっていく度合いがリアルに概観できる。ちなみに女子版としては坪内順子氏によるもの(1979)があり、先の「日本型・少年非行」や「現代の非行」に掲載されている。

▼「現代の少年非行〜理解と援助のために」(NEW心理学ブックス)   (萩原恵三編、大日本図書、2000)
総覧型の入門書である。共著であるが、それを感じさせない全体のまとまりがある。著者は編者も含め3人いずれもが少年鑑別所の技官である。同社の古典「非行少年の心理」の後継本で、その大役を十分に果たしていると思う。指摘も断定的でなく、随所に臨床実務家としての良識とセンスを感じさせてくれる。

▼「少年非行の世界〜空洞世代の誕生」(ゆうひかく選書)   (清水賢二編、有*ひ閣、2000)
入門書とくくりきれない意欲的な本である。時代の分析もし、現代を空洞世代と名付け、21世紀の非行の予見までしている。一方で各論の初発型非行、暴力、性、薬物、いじめの各記述は事例も挿入し、なかなか臨床実務的な解説になっている。編者は「少年問題についていま語り合うことのために必要な基礎資料となることを願って」この本を編んだと述べている。編者は元科学警察研究所研究員で、執筆者は家裁、警察関係者が中心である。




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