講演録「牧師のストレスとセクハラ問題」(4)
2008.04.17 Thursday 22:43
3.ストレスに対する私たちの選択
■皇族?牧師?
ただし、ストレスがすごいものだとしても、そのために何か悪い反応がわき出てくるようなイメージがあるかもしれません。しかし、そうではないと思います。そうしたなかで、私たち一人一人がどう対応していくのか、を選び取っているのです。だからこそ、人によってストレス反応の出方、方向などが違ってきます。
いす
実は、日本で、牧師は2番目にストレスのかかる職種だと思っています。一番は間違いなく皇族ですね。皇族は、メンタルヘルスとしてみると、牧師より更に悲惨だと思いますね。日本中が映像も含めて追っていますしね。ある心理学者が言った言葉ですが、皇族のような深刻なストレス環境を生き抜くためには、ふたつの道がある。ひとつは、逸脱した恋愛関係に陥るか、ひとつは、病気になるか。そう考えると、逸脱した恋愛関係で生き延びているのは、たとえば、英国の王族です。日本は、病気のほうに反応しているということになります。失語症とか、適応障害とか、いろいろと取りざたされています。ある方は、自らのアルコール依存を告白しましたよね。それくらいストレスがすごいのだと思います。
それでは牧師はどうでしょうか。ある時、仕事で接点のあった、高齢のクリスチャンのご婦人の方と電車で偶然お会いしまして、20分くらいそのままお話をする機会がありました。その方が、私がカウンセラーだと知ってですね、いろいろ質問されてきました。教会では役員をされている方なんですが、教会のことを熱心にお考えのようでした。ちょうど牧師のメンタルヘルスの話題になったとき、彼女がこう言いました。
「牧師でも、タフな人とそうでない人がいるのではないですか?」と。というのも「私の行っている教会の先生はタフで、びくともしません」とのことでした。そこで、私は何気なく、「人はストレス反応として二つあると言われていますね。ひとつは病気の方向に。もうひとつは金銭や異性問題などに。」と言いました。すると彼女は「ああ〜。そうですか。確かにあの牧師はタフだと思っていましたが、女性問題という意味ではいろいろありました。そういうことですか」と真顔でお話になりましたので、かえって私のほうが驚いてしまいました。ちょうど皇族問題に重なります。

■私の経験談
このように、二つの異なった反応の方向があるということを申し上げたいんですね。私の経験談になりますが、私が法務省でカウンセラーの訓練を受け始めて10年が経ったときに、大体一人前のカウンセラーになったなという感じがありました。そして思ったのは、少し守備範囲を広げ、カウンセラーの技能に磨きをかけようということです。これまでは、非行や犯罪者のカウンセリングをしていたので、今度は一般の、もう少し違ったタイプのクライアントのカウンセリングをしてみたいと思ったんです。当時、職場の研修制度もありまして、月曜日から金曜日までは少年鑑別所の非行の面接をし、土曜日だけ民間の心理相談室で、研修名目で一般的なカウンセリングを体験させていただくことになりました。
その民間の心理相談室に来られる方は、おおざっぱに言って、ご本人が「うつ」であったり、あるいは、親として子育てで悩んでいたり、あるいは、家族の中で統合失調症の方がいて、家族としてどうかかわればいいのか、という相談が多かったように思います。そして非行や犯罪の相談はありませんでした。
私なりに、非行の面接では努力して勉強してきたつもりもでしたので、自分の切れ味を試すという、そんな強気の思いもあったのですが、実際に民間の相談室に行って、カルチャーショックの連続で混乱しきってしまいました。ありとあらゆることが、私がやってきた非行のカウンセリングと違ったんですね。すべて違いました。私のほかにも研修名目で参加しているカウンセラーが数名いましたが、私だけが話し合いのときにも、理解できなかったり、通じないんですね。ショックを受けましたし、自信をなくしました。
具体的に言いますと、たとえば、民間相談室にいますと、相談に来たクライアントの方がすごくしゃべるわけです。一方、非行カウンセリングは沈黙がちです。いかにカウンセラーがするどい質問を用意して引き出すのかが大事なんです。全然違うわけです。
また、民間相談室で面接をしていると、クライアントの方がカウンセラーに感謝してくれるんですね。ましてや、良好な解決に至ると、本当に尊敬されるような感じなわけです。非行カウンセリングの場合はあまり感謝されません。むしろ、文句を言われることがあります。
また、一般の民間相談室は、最終回がわかるんです。今日、これで終っていいんだなというのがわかります。非行カウンセリングはわかりません。本音を言うと、本当に平気だなと終わりにしたときには、振り返ると、実はもっと早く終わりにできたのかなと思うことがよくあります。でも、どんなに熟達したプロでも、その時点ではやはりわからないんです。だいぶたってから、振り返ってわかるんですね。ところが、普通の相談室の相談は、だいたいわかりますし、拍手もわく感じです。一般のカウンセリングはやればやるほど元気が出てきます。同じカウンセリングでもこんなに違う世界があったんだなと感じがしました。
(つづく)

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2020.02.17 Monday 22:43
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Comment
2008/04/18 11:10 AM posted by: 花鳥風月
深い 内容ですね☆
正に、
現場の生身の声♪

是を、
欲して 居☆
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