オピニオン「指導者の使命感と共感性」
2008.04.22 Tuesday 22:29
 ブログ記事「アエラ最新号「牧師の性犯罪」記事を読んで」(08年4月10日)を、おおむねそのまま、クリスチャン新聞オピニオン欄に載せてもらった。ちょうど年2度の原稿依頼が来たので・・・。
 雑誌「AERA」2008年4月14日号(朝日新聞社)に「牧師の性犯罪」についての記事が載った。心痛む事件である。本来なら、まず霊的、神学的な側面からの分析・洞察を行うべきところであるが、ここは筆者の役割上、心理カウンセラーの立場から、事件の全体像の理解というのではなく、一つのトピックスについて書き留めておこうと思う。
 工具
それは、加害者として問題を起こす牧師が、一般に「尊敬され、高尚な生き様を周囲から認められていた」「良い仕事をし、実績がある」「実際に交流があったが、とても信じられない」といった感想が寄せられることだ。
これには必然性がある。つまり、多くの場合、並の人材でなく、むしろ有能・大物で、本来豊かな仕事をしていく人のはずであったのだ。
 私は、問題を起こした牧師や指導者たちが最初から、いい加減な活動をしていたとはまったく思わない。ただ、その牧師や指導者の活動が評価され、拡大していく(活躍していく)なかで、次第に「使命感」が膨張してしまうことが大きな問題と結びついていくと考えている。大きな働きをする指導者にとって、使命感と共感性のバランスが大切なのだが、ある人は使命感ばかりが膨張してしまい、この共感性が枯れていくので、いざというときに常識的な自己点検ができなくなる。
 そもそもどのように高貴な人の「使命感」にも、高尚でない人間的な「混ぜもの」が入っているものである。本当に高尚な人生を全うする人は、そうした混ぜものが自分の使命感に混入している、あるいは混入してくる危険性をリアルに自覚している人である。
 それがないと、役割や自分の立ち位置で得ている、自分の賜物(才能)や成熟さを超えた「底上げ」部分の評価や実績を、自分の評価や実績だと思いこんでしまいやすい。また、自分の「使命感」が絶対だと思い始めた瞬間から、使命感が最優先され、そのためなら他の物を(宗教をも)利用することが始まってしまう。そして自分の使命感、自分の人生のためなら、多少のことは許される、仕方がない、という感覚が強化されていくのではないだろうか。
 悲しいことに加害者が、それを認めた後も可能な限り、従来通りの活動を続けようとすることがある。混ぜものだらけの使命感であっても、また、ひからびた、悪臭を放つ使命感であっても、そして、世間からみれば使命感とはほど遠い個人の私利私欲にすぎないものなのであるが、本人からすればまだ幻想の「使命感」を手放せないでいるのである。
 義人はいない。英雄もいない。スーパーマンもいない。ただ、自らの内にある混ぜものを警戒・吟味し続ける謙虚な人たちがいて、指導者としての役割を神から一時的に与えられるのである。
 (クリスチャン新聞、08年4月27日、オピニオン、「神から一時的に与えられる指導者の役割」)
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2018.09.20 Thursday 22:29
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Comment
2010/07/29 1:20 PM posted by: ふじかけ
シマサキ さん

>これだと大きな仕事はできませんかね

そうかもしれません(笑)
ただ、大きな仕事はできないかもしれませんが、
上質な仕事はできそうな気がします。あくまでも気がする程度ですが。

2010/07/21 10:33 AM posted by: シマサキ
先日はありがとうございました。これからゆっくり読ませていただきます。このブログが紹介されていたので、ちらっと覗いたら、このページに行き着きました。使命感は、牧師の召命感にあたるものだと思いますが、牧師として召されたと確信すればこそ、貧しくつらい生活にも絶え得るという面もありますが、それが逆に本人の牧会、生活、感性を硬直化させていくことにもなるような気がします。上記の文章の「一時的に」とあるように、牧師も信徒も、「ある時期に、この仕事に就くように、導かれているように思える」というぐらいがよいのではないか、、と。でも、これだと大きな仕事はできませんかね??
2008/04/25 11:58 AM posted by: ふじかけ
はちこさん

ブログ「はちことぼぼるの日記」
ちょくちょく拝見しています。
ブログ内での紹介、ありがとうございます。

同じ問題意識ですね。
2008/04/25 1:15 AM posted by: はちこ
ふじかけ先生、

私もちょうど、使命感の落とし穴のようなことについて考えていたところでしたので、トラックバックさせていただきました。
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2008/04/25 8:14 PM posted by: はちことぼぼるの日記
 臨床心理士のふじかけ先生が、ブログに「指導者の使命感と共感性」という記事を載せておられた。  私もちょうど、「使命感の落とし穴」のようなものについて思わされていたところだったので、ちょっとメモ。  人が使命感に燃えていると、大きな仕事ができるものだ
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