(3)総登場型
2006.12.05 Tuesday 01:31
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(3)総登場型

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非行は組織が異なり「足場」が違うと,とたんに見える風景が違ってくる。それならばいっそうのこと各組織,各風景の人にひととおり登場願って,総花的に合作してしまいましょう,という話になる。応用や非行臨床に普遍的な体系を模索するには難があるが,とりあえず確実に役に立つ。時に自分の足場に一番近そうな章を読んだり,時に百科事典のように読んだりする面白さもある。

▼「矯正・保護カウンセリング」(実践カウンセリング4)   (遠山敏編、日本文化科学社、1990)
 カウンセリングの一般原則を扱う本はいくら読んでみても、非行臨床ではどうも通用しそうもない。ならば、正反対にそれぞれの司法機関の業務に密着して具体的な実践や技法を個々に紹介してしまうのはどうか。そうした総登場型の精神で編まれた,手堅い本である。扱う領域は矯正と保護。「矯正」というのは、法務省矯正局が所管している施設を指す総称で、少年鑑別所、少年院、刑務所等を指している。また「保護」とは同じく法務省保護局所管の保護観察所等を指している。編者は、「矯正」で心理技官等を経験している遠山敏氏。執筆者には矯正や保護の実務家が多数参加している。書名の「カウンセリング」という概念を広げ、実際には広義の心理療法を多く扱っている。特に編者の遠山氏の文章は一皮むけた内容で、実務の実践を扱いながらも普遍的なヒントに富んでいる。なお、この書籍と同じようなまとめ方で、あまり知られていないが「矯正処遇技法ガイドブック第1分冊,第2分冊」(矯正協会、1991)がある。こちらは矯正施設で行われている諸技法をこれでもかと大量にとりあげ、ばりばりの実務家が解説している。

▼「司法心理臨床」(心理臨床プラクティス第5巻)   (竹江孝・乾吉祐・飯長喜一郎編。星和書店、1991)
 編者は大学教官と少年センター(警察)の実務家。先の「矯正・保護カウンセリング」が実務サイドに密着することで有用性を増すことができたとすれば、この本はさらにその実務領域を最大限に広げてしまったもの。見た目も分厚い。実務家が見事なほどに総出演し、分担執筆をすることで、多岐にわたる関係各機関の活動内容がわかり、かつ司法システムの俯瞰的な理解までもが得られる。また執筆者の迫力や熱気も感じられる。そうした総出演型の老舗の本ではないかと思う。私がこの本の中で教えられたのは、編者の一人である乾氏の「司法臨床への疑問と関心」の記事である。疑問については),慮⇔呂鯒愀覆砲靴疹況と心理臨床活動とは矛盾した設定ではないか。∋碧,離▲札好瓮鵐箸篌N鼎呂匹里茲Δ瞥論や体系があるのか、抵抗の処理はどうするのか。といった、病院臨床から見た本質的な疑問を挙げている。本書「非行カウンセリング入門」は私なりの疑問への回答である。また、氏は司法心理臨床の実践が、心理相談の基本的枠組みを指し示すとして‖亰茲鉢中立性を挙げている。まさにそのとおりであると思う。

▼「非行臨床の実践」   (生島浩・村松励編、金剛出版、1998)
 編者は保護観察官と家裁調査官。他の執筆者は多岐にわたる分野の実務家が参加し、総出演型の入門書であり、実務家のための実践報告書でもある。先の「司法心理臨床」の流れを汲むが、非行臨床の独自性をより打ち出し、事例や実践報告的な要素が増えている。また家族療法の訓練を受けた新世代の臨床家が編者2名を中心として存在感を示している。ちなみに私は「心理テストによる診断と援助〜少年鑑別所における短期面接から」という記事を執筆。「やせ我慢・背伸び」論と描画テストを使った面接例を紹介した。個人的には村松励論文には特に共鳴し、幾度も読み返し勉強させていただいた。

▼「ケースファイル・非行の理由」   (村松励、生島浩、藤掛明編、専修大学出版、2000)
入門書ではあるが、事例検討が中心であり、それも現代的な目新しい非行を中心に選んでいるところに特徴がある。親父狩り、校内暴力、殺人、強制わいせつ等16の記事が続く。執筆者も各分野の実務家の総出演型になっている。私も「激増するひったくり非行」と「キレる少年のカウンセリング」の2つの記事を担当している。



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