(4)概説・専門型
2006.12.05 Tuesday 01:33
--------------------------------------------------------------------------------
(4)概説・専門型

--------------------------------------------------------------------------------
非行領域全般を扱う専門書がある。多くは体系や類型を意欲的に提起する実力派ぞろいの頼もしい書籍群である。

▼「非行少年の類型」   (高橋雅春著、文教書院、1970)
 この書は非行理論の平易で教科書的な解説を終えると,後半(第4章)では文字通り非行少年の臨床心理学的類型を12に絞り,実務家ならではの具体性で紹介している。著者は若い頃、少年鑑別所の技官としての実務経験を積んでいるが,そこでの鑑別(診断・査定)の枠組みをそのまま示しているような明快な内容である。
非行は,集団か単独か,一過的か反復常習的かで,また攻撃的かそうでないか等で,様相がかなり異なってくる。実務家であればごくごくあたりまえの,自然と体得するような判断枠を,ていねいに説明してくれるようなところがあり,非行専門の司法臨床家というよりは,非行に不慣れな一般のカウンセラーにはもってこいの目ならしの書ではないかと思う。この高橋類型は,現代でも十分に使える内容であるが,入手はできない。もし現代最新版として,実務家のどなたかが新たに同様の類型ものを書いてもらえるといいのになあと私は真剣に思っている。

▼「増補非行臨床心理学」   (水島恵一著、新書館、1962、増補1971)
 非行臨床を体系的総覧的に扱った古典的な名著。臨床心理家が非行に絞って、それも専門書として世に出したのは、このころとしては珍しく、圧倒的な存在感を示し,その後の多くの論文で文献として登場する書でもある。著者は若き日に少年鑑別所や児童相談を経験している。内容は、理論から臨床、診断から処遇に至るまで、当時の文献を網羅させ、膨大な内容をまとめたもので、内容に極端な偏りもなく、かといって著者の臨床実務家としての個性も含まれている。非行類型を,急性非行,人格性非行,神経症的非行,不適応性非行,感応性非行,習慣性非行の6つに分けて,説明も臨床的である。「非行少年の解明」(新書館、1964)がこの書の続編として発刊された。なお、これらは現在絶版になっているが、同じ著者による2冊のダイジェスト的な内容(それでもかなりボリュームがあるが)として「非行・社会病理学」(人間性心理学大系第8巻)の第2部「非行臨床」(大日本図書、1987)で読むことができる。

▼「非行臨床・実践のための基礎理論」   (井上公大、創元社、1980)
著者は家裁調査官出身の方である。書名の「臨床」は「研究」に対比したもので、非行問題の諸問題を臨床的観点から解説を試みたもので、密度の濃い著作である。「非行臨床実践上の諸問題」以降は特に濃い。井上氏は、少年補導(現、月刊少年育成)誌に「非行研究ノート」という連載記事を担当し、それを基にこの著述をまとめられた。私の最初の単著「描画テスト・描画療法入門」も、この同じ雑誌の連載をまとめたもので、連載開始時に編集者から井上氏の「非行臨床」も当誌連載がまとまったものですよと言われ、大いに発憤したのを覚えている。

▼「非行の病理と治療」   (石川義博著、金剛出版、1985)
 著者は医療少年院,医療刑務所の医師の経験がある。精神療法的な立場に立った専門書として多くの専門家が愛読し,よく引用されている。もともと,司法システムでは多くの機関に分業化されており,一貫した事例の追跡や治療が難しい。いきおい査定・診断や,特定分野の指導報告に偏りがちである。また面接や指導の前提に司法の権威構造がある。そのために,司法外の臨床家や,同じ司法内でも他の部署の者からみると,せっかくの専門書もどこか参考になりにく感じが残る。しかしこの本は医師としての立場を最大に生かし,また司法ケース,病院ケース双方の事例をも対象として,症例報告のスタイルで詳細に事例の終結まで関わりながら考察を行っている。そのため,多くの臨床家,とりわけ司法外の,また事例を治療的,指導的に最後まで関わろうとする臨床家に,共感を呼ぶ内容となっている。また非行少年観や治療観を問題とし,「彼らの態度の奥深くに,苦悩に満ちた声なき訴えや甘えのかすかな呼びかけを察知できるかどうか」「治療者が非行少年の立ち直りと自立する可能性を信じ,人間的な出会いを求めつつ,たゆまぬ語りかけを続ける覚悟ができているかどうか」という2つの問いかけ(243頁)を行っている。この治療技術以前の治療者の姿勢を問う石川節も,さらに多くの共感を呼んでいる。なお,同じ著者による共著本で,病院外来でチームで対応した登校拒否や家庭内暴力の症例報告「思春期危機と家族・登校拒否,家庭内暴力のチーム治療」(岩崎学術出版,1986)があり,ここでも石川節を味わえる。

▼「非行少年への対応と援助〜非行臨床実践ガイド」   (生島浩著、金剛出版、1993)
著者は当時保護観察官であり、時に過激な表現で、非行臨床の現場に向けてカンフル注射を打つような熱意がくみ取れる。内容は家族療法の精神を貫き、しゃにむに保護観察官の実務をこなしながら考えたもので、読んでいて説得力がある。それまでの精神療法中心の非行解説の流れからすると、家族療法や家族療法的な働きかけが隆盛していく最初の突破口的な位置にある本だと思う。同じ著者による「悩みを抱えられない子どもたち」(日本評論社、1999)は、同じ様な論旨ながら、もう少し一般的でマクロな視点が加味されている。

▼「子どもの心理臨床」(体系20巻)   (安香宏、村瀬孝雄、東山紘久編、金子書房、2000)
 金子書房の強力な基本全集。この巻には「非行」と「性的逸脱」の章で、非行が扱われ、矯正、家裁、警察、児相等の実務経験のある6人の記事が読める。他の巻では、「適応障害の心理臨床」(体系10巻)が役に立つ。「学校不適応」、「非行」、「薬物依存」等の章がある。なお、編者の一人である安香宏氏による家族周期論からみた「非行と家族」(「家族の人間関係(11)各論・講座人間関係の心理2」に収録、ブレーン出版」)も秀一。



| ふじかけ | 非行の本紹介 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
2020.01.23 Thursday 01:33
| スポンサードリンク | - | - | - | pookmark |
Comment
name:
email:
url:
comments:
Trackback
トラックバック機能は終了しました。
Search
Profile
Recommend
Recommend
Recommend
Recommend
Recommend
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき (JUGEMレビュー »)
藤掛 明
雨の心理的イメージを鍵に、雨の降る物語を読み解く。カウンセリング論であり、人生論でもある。
Category
Archive
Latest Entry
Recent Comment
Recent Trackback
Links
Admin
Calendar
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< January 2020 >>
記事分析
アート情報
Sponsored links
Mobile
qrcode
無料ブログ作成サービス JUGEM