(7)特定の心理技法解説型
2006.12.05 Tuesday 01:39

--------------------------------------------------------------------------------
(7)特定の心理技法解説型

--------------------------------------------------------------------------------
心理技法というのは,あるいはその技法の解説者というのは必ず背景を持っている。それが非行臨床である場合には,その解説書が,非行に無関心で,普遍的な解説を狙っていたとしても,読み手が非行に関心を持って読むと,とたんに非行をみずみずしく映し出してくれるユニークな臨床の本になる。

▼「ロールレタリング」   (春口徳雄、創元社、1987)
 他人と自分の双方の視点に立って、双方から交互に手紙を書いていく方法を役割交換書簡法と呼び、カタカナ言葉ではロールレタリングと呼ぶ。日本の少年院の教育実践の中から生まれた技法で、今でも多くの少年院で実践されている。この本は本技法の説明を幅広く行っている解説書であるが、出てくる事例は非行中心であり、非行の指導を考える上で示唆に富んでいる。ちなみにこの本の234頁の手紙を書いたのは社会人3年目のういういしかった私です。なお先の「矯正・保護カウンセリング」の中でのロールレタリングの項目があり、そこでは同じ著者によるコンパクトな解説記事が読める。

▼「心理面接のノウハウ」   (氏原寛、東山紘久、岡田康伸編、誠信書房、1993)
 子ども面接、思春期女子面接・思春期男子面接、といった具合に8つの領域の面接の構造と留意点を扱った記事が続く。書名とは裏腹に、ノウハウでなく実に本質的で掘り下げた内容が扱われていると思う。それぞれがコンパクトな文量で圧縮されている。その中で7章が「非行面接のノウハウ」(藤田裕司)になっている。執筆者は鑑別所の技官経験者で、私も入れ違いで同じ施設に勤務したことがあるので、その熱心な実務家時代を職場で聞いたことがある。きちんと権威構造を説明しているし、陰性感情や見捨てられ不安といった概念を、実にカウンセリング場面でどう扱うのか、実際的な要領と助言に満ちている。個人非行カウンセリングを真剣に実践されてきた方なのだとしみじみ思う。ほかに境界例面接や親面接、学校カウンセリングといった章もあり、参考になる。
 なおこの本の1年前、「心理臨床家のための119冊」(創元社、1992)という書籍が出ているが、その中の非行ジャンルのテーマ解説を同じ藤田裕司氏が行っている。短文であるが、非行面接の問題提起をぴりりと行っている。ちなみに、紹介・解説されている本は「非行の病理と治療」(金剛出版)、「非行をどのように治すか」(誠信書房)「矯正・保護カウンセリング」(日本文化科学社)「「非行」が語る親子関係」(岩波書店)の4冊である。また、内容を取りあげられないものの、定評ある名著として書名だけ上げているのは「増補非行臨床心理学」「非行少年の解明」「非行臨床」「非行少年の事例研究」「日本型少年非行」の5冊である。紹介書籍は、「精神分析的オリエンテーション」中心であり、90年代初頭の非行臨床の状況をよく反映している。

▼「描画テスト・描画療法入門」   (藤掛明著、金剛出版、1999)
 この本は非行のための本ではなく、あくまでも描画一般の解説書である。しかし、非行臨床での事例を満載しているため、結果的に非行カウンセリングの観点から読んでもいろいろと発見があると思う。例えば「素顔に触れるとき」では、家出売春少女と恐喝少年の面接事例が、「キレる若者と描画療法」では、分裂病型人格障害の凶悪非行の事例が扱われている。本書の「背伸びの息切れ」という観点から読み直すといずれも典型事例ともなっている。


| ふじかけ | 非行の本紹介 | comments(1) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
2020.10.17 Saturday 01:39
| スポンサードリンク | - | - | - | pookmark |
Comment
2006/12/20 2:23 PM posted by: 中川 祐治
ロールレタリングに関して「日本の少年院の教育実践の中から生まれた技法で、」とありますが、実際は25年くらい前に横浜にあった可能力開発センターの研修の中で開発、発展していったプログラムです。
その効果の評判を聞きつけて、少年院の教育に取り入れたいのでノウハウを教えてほしいとの依頼があったのですが、当時の経営者はノウハウ流失を嫌い、断ったそうです。
それで仕方なく独自で真似をしたというのが経緯です。
私の師匠が当時のトレーナーをやっておりました。
name:
email:
url:
comments:
Trackback
トラックバック機能は終了しました。
Search
Profile
Recommend
Recommend
Recommend
Recommend
Recommend
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき (JUGEMレビュー »)
藤掛 明
雨の心理的イメージを鍵に、雨の降る物語を読み解く。カウンセリング論であり、人生論でもある。
Category
Archive
Latest Entry
Recent Comment
Recent Trackback
Links
Admin
Calendar
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< October 2020 >>
記事分析
アート情報
Sponsored links
Mobile
qrcode
無料ブログ作成サービス JUGEM