非行臨床におけるコラージュの実戦
2006.12.05 Tuesday 01:47
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 * 「芸術療法講座」5巻物の「コラージュ/造形」の巻(岩崎学術出版)に掲載の論文。なお、図表は省略。
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非行臨床におけるコラージュの実践

   1.非行臨床におけるコラージュ

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 非行臨床におけるコラージュは、その歴史は比較的浅いものの、独自の発展を遂げている。それは、内省を回避し続ける行動化型の人にとって、コラージュが非常に希望のある体験と洞察を導いてくれるからにほかならない。一般に通常の描画がイメージを描き出すことに重点が置かれるのに対して、コラージュはイメージを「貼り付け」て、イメージを再構成していくところに妙味がある。それは自分の心の奥底にあるイメージをすくいとるというよりも、今、どのような方向に向かおうとしているのかという描き手の構えのようなものを扱う魅力ともいえる。それはコラージュ作業の中で体験的に考え、再発見していく営みであり、未来建設的な営みでもある。
 ただ、このようにユニークな営みを内包したコラージュ法は、その実施にあたって、多様なアレンジが許容されており、実際の技法解説としては、非行臨床に限定するにしても、やはりそのすべての幅に対応することは不可能である。そこで、筆者自身が実践している方法を中心に紹介せざるを得ないことをあらかじめお断りしておく必要がある。しかし、こうした特徴は、実施上、また技法習得上の制約というよりも、自分の臨床の在り方に適した形に自由にアレンジしていくことのできる可能性として、やはり、本法の魅力の一つということができる。
(1)少年鑑別所における造形物と「コラージュ」
 非行臨床におけるコラージュを始めとする造形物の体系的な導入は、歴史的には少年鑑別所の処遇の中で始まっている。
 まず、臨床的な意味合いで、点描の「貼り絵」が少年鑑別所発足当初から多くの施設で導入された。これは市販の色紙を押し棒で台紙にちぎり付けながら点描を施す描画で、根気のいる種目でもある。一方、雑誌やパンフレットの印刷物を自由に切って貼る「コラージュ」は、90年代半ばから急速に少年院や少年鑑別所に導入されるようになっており、現在では、コラージュと点描の貼り絵とが共存している。
 ほかに、少年鑑別所での造形の種目としては、粘土細工も有力な方法として古くから活用されており、こちらは主として小規模施設を中心に採り入れられている。粘土細工の実施法は、コラージュや点描貼り絵以上に多彩であるが、例えば、富山少年鑑別所では、3セッションを通じて、何かをしている母親の手、父親の手、自分の手を順次制作してもらい、その思い出等を聞いていく方法を採用し、家族認知を探り、家族洞察への促しとして体系的に活用している。
 このように、点描貼り絵、コラージュ、粘土細工の3種が普及度において、少年鑑別所の造形活動としては代表的なものといえる。これら3種目の持ち味を比較すると、粘土細工は情緒面での揺さぶりが最も深く、かなり中核的なイメージが一気に噴出してくる感がある。しかし、制作者本人は漠然とした意味付けを行っていることが多いので、そこから意味をすくい出す作業が重要になる。一方で、点描貼り絵は、先の硬い押棒で膨大な時間をかけて点を引き詰めていく作業であり、非常に知的で統制的な要素に満ちている。作画意図も明白で、時にポスターのような作品も現れる。長時間画面に向かい合うので、主題は情緒的に安全なものが選ばれやすく、情緒的な刺激は比較的浅い場合が多い(ただし、貼り方や色彩処理に情緒面での個性が現れる)。コラージュは、いわば両者の中間に位置し、意図的統制的な要素も、情緒的深層的な要素もあるといえる。その守備範囲も両極に限りなく近くまで広げることができ、多くの場面で柔軟な実施が可能である。
(2)臨床的な使用による報告例
 我が国での非行臨床におけるコラージュの報告を概観すると、文献上は、1994年から一気に報告されるようになってる。
 藤掛(1994、1995)は、鑑別面接でぐ犯女子少年や薬物非行少年へ適用した事例を報告し、吉村(1994)は一般外来相談の事例として、不登校児に実施した事例を報告している。また八王子少年鑑別所を中心とした研究グループ(小島、中村、上野、藤掛、1994)が各種鑑別事例や統計調査を報告し、また小島(1995)が鑑別事例を、藤掛ら(1995)が外来相談での「コラージュ教室」(啓発型のグループ・コラージュ)の実践を報告している。1995年以降は、いくつかの少年鑑別所や非行関連学会でもコラージュを取り上げるようになり、体験学習型のワークショップを開催して、非行臨床でのコラージュの普及に勢いを付けた。その後も、非行臨床では多彩にコラージュは発展している。その極めつけは、コンピュータのグラフィック機能を使い、画面上でコラージュを制作するソフト「アートクリック」を法務省矯正局が少年院、少年鑑別所用に開発したこと(2000)である。日本のコラージュの歴史の中でもコンピュータを使った最初の本格的試みとして、非行臨床以外の分野からも注目を集めている。

 2 非行臨床におけるコラージュの魅力

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 非行臨床におけるコラージュ法の魅力として筆者は特に次のようなものがあると考えている。
(1)美的満足感と負担のない自己表現
 まずコラージュを実際に導入してみての最大の実感でもあるが、コラージュでは美的満足感を強烈に味わえるということである。それなりに見栄えのよい作品が制作できるのである。砂場遊びの幼児になるのでなく、大人の美術家になれるということである。これは大きな利点である。背伸びする心の筋肉を鍛えている彼らに、一見背伸びを誘うような「味」がある。だからこそ嬉々として取り組んでくれるのである。もちろん、制作意欲のない場合にも、創造性をそれほど要求されることなく自己表現することが可能であり、負担感は少ない。
(2)快楽の世界
 投影法の心理テストというのは、あいまいで不快な刺激を与えることで、回答者の個性を深層レベルで引き出そうとする原理が働いている。描画テストにおいても、似た事情がある。しかし、コラージュの場合、白紙の状態で、「何でも好きなもの」を選び取り、「好きなだけ」「好きな方法」で貼りつけることが許されることになる。いわば「快楽」の原理である。人生や環境において、愛情や能力や金銭等さまざまな点で大きな制約のもとに置かれてきた彼らにとって、それは恐ろしく新鮮な体験となるし、疑似体験ながら新しい認知や洞察が生み出されることもある。ある非行実務家の事例報告で、「バイク窃盗常習の少年にコラージュを実施したところ、とりつかれたようにバイクだらけの作品を数枚作り、その後ようやく自分のバイク執着についての洞察を始めた。」というものがあった。かようにコラージュというのは逆説的な切れ味があるのである。
(3)試行錯誤という体験
 コラージュは制作にあたって試行錯誤ができるという利点も大きい。まず、使用する写真の紙片を、画上で自由に並び替えられるし、いったん使おうと思った紙片でもぎりぎりまですげ替え可能である。また1枚の完成に時間がかからず簡便であるため、2枚目、3枚目と連作していくことが容易であり、作品単位でも試行錯誤していくことができるともいえる。こうした特徴により、作り手は不快な刺激を避けられるばかりでなく、いつもとは違う作り方(生き方)を画上でほんのわずか試行してみることができるのである。心を閉ざし硬直した生き方に陥りがちな彼らにとって、画上のこととはいえ、「やり直す」、そして「変えてみる」という体験は貴重なものである。

 3 実施上の留意点

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 非行臨床でコラージュを活用する際に、必要となる留意点を、ここでは素材の提供、道具、実施手順について具体的にあげることにする。
(1)素材の提供
 一般にコラージュを素材の提供方法からみると、コラージュ・ボックス法とマガジン・ピクチャー・コラージュ法に分けることができる。制作時間の長さや、素材を選び取る際の幅の広さ、また、ボックスに素材を補給したり、雑誌を用意したりといったメンテナンスの在り方に違いがある。
 貼り付け素材を用意する際、雑誌等の持ち込みが難しい状況(例えば矯正施設)や、雑誌等から能動的に選び出すという時間的負担や、急激な心理的深まりなどを避けたい場合には、コラージュ・ボックス法がやや有利である。筆者はコラージュ・ボックス法で行うことがほとんどで、他施設等へ出向いて面接する際にも、大きめの封筒に切り抜いた写真素材を入れて持ち運んでいる。
(2)道具
 用意する道具の違いによって、作品の深まり方に多少の影響がある。台紙の大きさは、大きい程、自由な自己表出の場が与えられることになり、開放的、感情表出的となり、退行的な刺激を受ける。逆に、小さい台紙になる程、画面の制約を考慮し、統制的、計算的となり、理性的な面が強まる。こうしたことは、糊やハサミ、また素材の提供などについても同様のスペクトラムで理解できる。それらを図式的に整理すると、表1のとおりになる。
 診断的な面接や期間の制約がある場合、あるいは急速に自己直面化を促すと危険な場合には、いたずらに初回から退行刺激を与えることには慎重でなければならない。
 筆者はB4版を原則用意している。制作過程でさらに大きい台紙が必要な場合には、台紙を2枚つなげて、倍の大きさ(B3判)で行わせることもある。一方で、課題をあらかじめ与え、意図的なイメージをあえて作ってもらう場合には、ハガキ大の台紙を用意することもある。
(3)実施手順。
 筆者は、完成作品について制作者に言葉による説明をしてもらう。また、筆者の感想や質問を伝え、制作者の意味付けを促すようにしている。作品のタイトルを付けることもよくしてもらっている。感想が過度に戦略的あるいは指導的にならないように注意し、むしろ作品を眺めた感想を相手のイメージに沿って「素朴」な感じで伝えることを心掛けている。
 また、制作後の話し合いを終えた際、試みに再度作品のタイトルを付けてもらうことがある。そうすることで、作品に対するその人の認知が制作後の話し合いでどの程度動いたのかを感じとる指標にもなるからである。たとえば制作直後に「楽しくて好きなもの」と題を付けたが、話し合いの後に再び聞くと「これまでの私から新しい私へ」とタイトルが本人の解釈により変化していくことがままある。
 筆者の場合、集団でわかちあうときもほぼ同じ手順である。自作品を作り上げ、それを指導者である私や集団のメンバーに見せ、制作者の感想、ほかのメンバーからの感想、指導者である私の感想といった順に発言する。参加者が慣れてくると発言がやや活発になり、ほど良いざわめきになる。集団の場合は、参加者の意欲や能力のばらつき、抵抗や妨害などが加わり、個人の実施よりもやや複雑になる。時間が足りなかったり、集団としての集中力が低下するような場合には、筆者は、指導者の発言の比率を増やし、ほかのメンバーの感想を減らすことで流れをコントロールしている。

 4 解釈、コメント

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 ここでは、面接者が言葉で感想をフィードバックするにあたって、作品内容を受け止める際の着眼点を中心に略述したい。
(1)作品内容
 内容的な特徴については、選び取られた素材の内容、及び制作者の意味付けを参考に、全体的に見ていく必要がある。中心的な主題や視点を、鑑賞したり、一緒に探索していったりすることが重要な作業となる。
 まず作品の標準的な傾向からの差異を感受するのが基本である。非行少年の作品では、「自然」「個人的興味(趣味、流行、スポーツ、仲間遊び等)」「家族や家・部屋」などをテーマに、「自然・風景」や「人物」「動植物」「乗り物(単車・車等)」「食べ物」の写真を貼り付けることがおおむね標準反応と考えられる。また制作者の意味付けを受け止めるにあたっては、素材の選択時、貼り付け時、さらには完成後の鑑賞時と、刻々と制作者の気持ちは動いていくことを絶えず意識する必要があり、「当初の意図とは別に、今こうやってあらためて自分の作品を眺めてみると違うことを発見した」という部分の方がより根元的な主題につながっていることが多く、重要となる。また「うまく言えないが、とにかくこの写真が好き」というような場合も同様である。
 また、筆者の場合、どのようなテーマであっても、家族や仲間など、関与し合う人間のイメージが表現される場合には、特に、連帯や疎外、または競争や優劣といった感情が込められていないかどうかをていねいに受け止めるようにしている。
(2)系列的理解
 系列的理解では、全体の流れに中での個々の作品の意味や、直前の作品に表現されたテーマの発展について、考える姿勢が必要である。筆者の実感では、初期のころのイメージには必ずどこかに背伸びをし、有能な自分、寂しくない自分を誇示するかのようなニュアンスが含まれている。それが回を追うごとに、等身大の自分を表現し始め、その人なりの無力感や疎外感を見せ、またそれを受容していくようになる。いわば統合する作業が進んでいく。そのあたりのイメージの推移が見所となるし、面接者として感想をフィードバックするときの勘どころともなる。治療効果があがらない面接では、最後まで景気の良い自分を表現しつづけることもある。経験則では、放火や性非行の場合、特に変化が起きにくい。ついで窃盗非行がその傾向にある。
(3)暗喩的意味
 描画全般にもいえることであるが、作品イメージには、制作者の深層イメージが「投影」される面と、それらを統合し、再構成していくという「構成」的側面の双方がある。投影の部分に光を当てると、ある程度恒常性のある情報が得られることになるが、しかし、それにとどまらず、構成の部分にも光を当てる必要がある。すなわち画面上で、自分の納得のいくイメージや意味付けを必死に探りながら自分の方向性を決めようとしている制作者の姿として捕らえるということである。イメージを、流動的で刻々と変わっていくものとして、また多義的なものとして受け止めることで、治療的な方向性が得られることが多い。一見、否定的なイメージや希望のないイメージに見えるものであっても、実は様々な意味が幾層にも同時に存在している。イメージを暗喩(メタファー)として受け止めることで、勇気付けられ、腑に落ちるような意味を、互いに探していく過程が、非行臨床の醍醐味であろう。
(4)集団の場合
 集団の場合、その場の作品群の布置を意識して感想につなげていくことも大切である。「A君のコラージュは家族が動物だったけど、B君のになると、マンガのイラストになった。」、「C君は歯を食いしばって前に進む感じ。D君は立ち止まって作戦会議をする感じ。二人ともなんとか事態を突破しようとしている。」といった具合に関連させ合いながら、感想を重ねていく。不思議と関連し合ったテーマが見つかるものだし、参加者の関与度が一気に高まる。

5 非行臨床におけるコラージュ法の応用

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 非行臨床においては、その特質から様々な工夫や変法が考えられており、ここではその一例として筆者が経験したものをあげる。
(1)攻撃的で粗暴な行動傾向が顕著な者に対して
 粗暴な行動傾向がある少年にハサミや刃物を与えることで、凶器に使用されるなどの危険が予想され、躊躇することがある。その場合には、ハサミや刃物を与えず、手でちぎってもらう方法や、あらかじめペンで切り取りたい輪郭を制作者に記させ、それを面接者がハサミで切り取る方法がある。特に後者の場合、言外に面接者が制作者を尊重する形となり、制作者の態度が和らぎやすい。
(2)心情不安定な者に対して
 現に心情不安定で混乱している者に、内面を揺さぶるような働きかけをすることは難しい。しかし、コラージュの場合は、制作者にとって、完成作品がちょうど良い快刺激となっていることが多いことから、完成作品を持ち帰らせ(施設では自分の居室に持ち帰らせ)、それを後から眺められるように配慮する方法がある。これにより安全なかたちで心情を支えることができる場合が多い。
(3)自己表現に抵抗が強い者に対して
 非行少年は、ある意味で、悩んだり、考え込んだりしない生き方を選択している。だから本当に自己表現を苦手としている人たちがいる。その場合には、個人の作品を完成させるという意味合いを薄め、面接者と制作者が相互に同じ画面に貼りつけていく方法がある。ゲーム感覚も味わえ、また共同作業特有の凝集性が生まれる。この相互法は、特に継続的な面接の初期にラポール作りに用いると手軽で効果的である。
(4)特定のテーマに直面させる必要がある者に対して
 継続的な面接の中でより特定のテーマに直面させる必要がある者には、上記相互法により意図的に介入することもある。たとえば、人物をまったく使わない作品を作り続ける者に対して、相互法で相手の素材に沿ったかたちで、しかも意図的に人物の素材を貼って、相手に人物の情緒的刺激を送るようなやり方である。また、台紙の表裏の象徴性を使って、最初に完成させたコラージュ(表)とは別に、裏面に反対のイメージを作らせるように導入していく方法もある。また台紙の表裏だけでなく、大きな台紙の画面を区切って、上下・左右と領域を分けて、片方を理想、もう片方を現実などといった指定をすることでも似た効果が得られる。ただし、介入を積極的に行う方法は、制作者に強烈な体験を促すことにもなりやすく、慎重に行う必要がある。

6 矯正施設でのコラージュ法の適用

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 コラージュは多様な実施方法が許容されており、その意味では、どのような臨床の場においても、その適用の可能性は無限にあり得る。矯正施設の場合もその例外ではない。ここでは、矯正施設での実践の大枠を素描し、その可能性について述べたい。
(1)少年鑑別所
 少年鑑別所では、まず個別面接で心理テストの一種として実施される。筆者の非行臨床におけるコラージュの経験も、個別面接から始まった。第二に、鑑別所の寮のホールや各人の居室において一定の時間帯に日課のひとつとして実施することがある。この場合、大勢の者が同時にコラージュに取り組むことになる。現状では、模索中の部分もあるが、実施の記録や少年に記入させる質問用紙、また一定の観察と評価のチェックリストなど、各所で工夫されたものが使われ出しており、今後の展開が期待される。第三に、鑑別所内で、不安、抑うつ、心気症的な訴えなどのある者に対してコラージュを実施することで、心情の安定を図ることがある。こうした働きかけは、一時的に気を紛らわすというよりも、その時点で無理のない程度に自分の姿に肯定的に目を向けるものであるため思いのほか持続する。
(2)少年院
 少年院では、小集団に対して教育的・治療的にコラージュを活用することができる。グループカウンセリング、グループワーク、問題別指導等、名称はいろいろあろうが、コラージュの最も得意とするところで、参加者が互いの作品の素朴な感想を交換し合う中で、自然なかたちで自己洞察を深めていくことができる。指導者は、感想を交換し合う場では進行の役を担い、積極的に集団の相互作用を活用し、介入していく。第二に、少年院の中で適応できずにいろいろな問題を起こしている者に対して、コラージュを中心とした個別カウンセリングを実施することも有効な方法である。少年院では継続的な実施が可能であり、コラージュのイメージの変遷に沿って話し合いを重ね、そのイメージの流れを確かにしていくことで、本格的な心理療法として機能する。第三に、処遇効果の測定である。時期を分けて実施し、その結果(作品)を比較することで、数値による比較のような厳密さはないが、処遇効果を測定することができる。また少年自身も一緒にこれまでの作品を眺めることで、調査と同時に、少年の一定の振り返りを促すことにもなり、非常に治療的なものとなる。
(3)その他
 少年鑑別所での外来相談(一般鑑別)についても、コラージュの活用の場として大きな可能性がある。また、新しい試みとしては、矯正展(刑務所の作業製品の展示即売と、パネル展示などによる啓蒙活動がミックスしたイベント)などのプログラムの一部として地域住民を対象に、自己啓発目的の「コラージュ」や「アートクリック」を実施することがあり、今後の展開が注目される。

7 非行イメージを扱う

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 コラージュでは自由題で作ってもらうことが多いが、アセスメントが主目的の場合には課題を設定することもある。特に筆者の実践では、非行そのもののイメージを課題とすることが有効であると感じている。
 従来、あまり非行そのものを心理テストや心理療法で扱うことは見受けられなかった。しかし、コラージュという安全性の高い技法の場合、直接非行内容を扱うことも可能となっている。
 特殊な、あるいは新奇な非行の場合に、その非行イメージをコラージュで表現してもらい、その心理的な実態を明らかにしていく方法となり得る。筆者の場合、ある時期から急増した吸引型の覚せい剤使用者に対して、非行イメージを課題にしたコラージュをし、多くの手がかりを得たことがあった。
 また教育・治療目的であれば、同じ非行を行った者のグループを作り、非行イメージのコラージュを各人が作って互いに感想を交換するような方法がある。筆者の場合、少年院の非行問題別指導という枠の中で、「ひったくり」の子供たちを集め、コラージュのグループワークを継続的に実施したことがあった。「ひったくり」イメージの多様性と、活発な討議を引き出すことができ、参加者に一定の洞察を付与することができた。また同じく少年院で、放火非行の少年の個別カウンセリングを幾人も担当したしたことがあったが、その中で、放火イメージを小さなカードに描いてもらい、その後そのカードも含めてのコラージュ作品を完成させ、その作品を基に話し合いを持つこともした。


参考文献

・市井真知子(1999)コラージュ技法の実際、刑政4月号、矯正協会
・藤掛明(1988)非行少年の貼り絵の分析・点描方法における裏面貼りと重ね貼りについて.臨床描画研究掘家族画研究会編、金剛出版
・藤掛明、中村尚義、小島賢一、上野雅宏(1994)非行少年のコラージュ(1)〜(3) 犯罪心理学研究第32巻特別号、日本犯罪心理学会
・藤掛明(1999)描画テスト描画療法入門、金剛出版
・藤掛明ほか(2000)現代ひったくり事情、新曜社
・藤掛明(2002)非行カウンセリング入門、金剛出版

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