連載:再び、家族のコンディション
2006.12.06 Wednesday 21:25
背伸びと息切れの時代・第11話
 「再び、家族のコンディション」

人は、幼い頃から「きょうだい」がライバル関係となり、競い合う経験をします。それは必要な経験ですが、家族に秩序がなく、親が子どもに一方的な期待の圧力をかけるようになると、過剰な競争心を生み出してしまいます。子どもによっては、それは思春期以降、暴走・脱線する背景になります。
 それでは、きょうだいのいない「一人っ子」についてはどのようなことが起きているのでしょうか。今回は、前回の続編として、きょうだいのいない「一人っ子」について考えてみたいと思います。

■ 一人っ子の経験すること
 一人っ子は、いつも身近に親や大人が存在していて、親の影響をストレートに受けやすいという特徴があります。いつもライバルのいない位置で、自分よりも上位の大人(主に親)の関心を集め、彼らを頼りとするからです。そのため依存的になりやすく、自分の無力さを示して、周囲から援助を引き出すスタイルを身につけやすいといわれています。
聖書に登場する族長ヨハネにも、そうした特徴がよく現れています。(ヨセフは一人っ子ではありませんが、兄たちとは年齢が離れ、父の愛情を一身に受けるなど、心理的には一人っ子の要素が強かったと思います)幼いころ、甘やかされたヨセフは、自分中心の「夢見る人」でした(創三七:五〜)。また野をさまよったときには、自分から意思表示するのでなくとも、他人から話しかけられ、細やかな助言を得ることができました(創三七:一五〜一七)。また非常に無防備なところもありました。兄たちが自分にかしずく夢を兄たちにいくども話して、彼らの神経を逆なでしています。一般に、末っ子も依存的であるといわれますが、末っ子は兄姉たちとわたりあって、戦略的に援助を引き出すのに比べ、一人っ子はそれがありません。したがって無防備というのは、同じ依存的であっても一人っ子特有の特徴と考えられています。

■ 一人っ子の可能性
 ヨセフのように甘やかされた子どもはいつまでも庇護され続けようとして問題を起こします。困難な状況ではへたり込み、問題から逃げ回ったり、誘惑者に無批判に同調するかたちで失敗をしがちです。しかし、一人っ子が訓練を受け、自立的な生き方を身につけるようになると大きく変貌します。ヨセフも、神の訓練の下、家族から離れ、自立し、他の主人に仕えたり、多くの人々を治める経験を通して、新しい人生が展開していきました。 新約の時代でも、預言者バプテスマのヨハネ(ルカ一〜、一人っ子)を見ると、依存性や無防備が、高次の自律性や純粋さに高められ、\嫻ご兇箚浜能力が高まり(創始者の資質)、妥協しない生き方ができ(使命感)、自分の弱さや限界に対する洞察も行われる(謙虚さ、ルカ三:一六)ようになっています。
ところで、私たちは、だれもが一人っ子的な問題を抱えています。まず第一子で生まれた人は、第二子が生まれるまでは間違いなく一人っ子だったはずです。さらに、青年期以降、他のきょうだいが独立するなかで、親許に残っている人は、一人っ子的な位置に置かれることがままあります。ほかにも、ヨセフがそうでしたが、きょうだいの年齢差や性差の分布によっても、一人っ子的な位置に置かれることがあります。たとえ一人っ子でなくとも、私たちのなかの、あるいは子どもたちのなかの、一人っ子的要素を考えてみることは有益なことです。

■ 子の自立のために
それでは一人っ子的な生き方を身につけている子どもが、成長し、良い形で自立していけるようにするためには、親として、大人としてどのようなことに気をつけるべきでしょうか。
 その基本は、思いを言葉に出させることです。親として子の窮状や不安を「察してあげる」ことは大切なことです。しかし、同時に、援助・庇護を受け続けようとするタイプの子どもの場合には、どうしてほしいのかを言葉にさせていくことが必要です。他者とのバウンダリー(境界)を持たせるための第一歩にもなりますし、良い意味で、その後の戦略や交渉力を学ぶことにつながっていきます。
 また、親の側で即解決の答えを用意しすぎない、あるいは親の好みの答えを押しつけないということも同様に大切なことです。
 さて、子どもばかりでなく、親の側でも自己点検をしなければなりません。庇護を受け続ける子どもには、庇護を与え続ける親がいるからです。
 実は親の子への関わりには、子への愛情だけでなく、親自身のために子に支えを求めることが必ず入り込みます。そのため、自分を吟味するには、他の大人たちとの交流の中で、親である自分を客観視することが理想です。できれば同じ子育て経験中の、他の親たちと交流し、子育ての愚痴を交換できるような場を持つと、格段に自分たち親子のことが見えるようになるはずです。
 また、一方で、親自身は子育て以外に、自分個人の人生を考え、自分を支えるものを持つことも必要です。特に子の年齢が上がっていくにつれ、そうしたことが大切になってきます。時にはペットや趣味がそうした役割を果たすこともあります。地域社会の活動や奉仕、教会の集会出席も役に立つでしょう。しかし、これら自己点検の本質は、親自身の生き方がどのくらい真に自立していけるかということにつきます。
 思春期以降の子どもの自立と、中年期以降の親の成長(いわば第二の自立)とは、実は同時並行で進んでいくものだからです。

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