描画技法辞典:「樹木画・バウムテスト」
2006.12.09 Saturday 08:49
【樹木画(バウムテスト)の方法と文献】

 樹木画は,コッホが,それまでスイスで主に職業相談に使われていた樹木画の診断的な使用をまとめ,それ以後ヨーロッパ文化圏に広く普及している。日本では,そのコッホの英文の著書の翻訳が紹介され,根強い人気がある。
 実施法としては,大別して次の二つがある。
■「実のなる木を一本かいてください。」(林勝造ら)
■「木を一本かいてください。」(高橋雅春ら)
▲コッホの原法では,「実のなる木」を描くように教示する。しかし,高橋は,次の理由で,あえてコッホの教示を採用していない。‥蟇橡,箸靴討脇団蠅量擇鮖慊蠅靴覆い納由度を確保したほうが良い。▲茵璽蹈奪僂汎本とでは風土・文化が異なり,「実のなる木」のイメージが異なる。
(高橋,1974,1986)。なお,高橋は,HTP(家屋・樹木・人物画)テストの一部として樹木画を扱っており,樹木画だけを単独で行う場合を積極的に認め,持論を展開している。通例は,バウムテストといえば,コッホの方法をさす。実務上は,あまり厳密にコッホかHTPテストかという区別はされていない。
 ちなみに私は,「実」をつけない教示が通常である。たまたま,私が最初に指導を受けた先輩が,日本では「実」を言わないと自信たっぷりに言ったので,そういうものだと思い込んでいた。私が高橋両先生の言われる理由以上に,今も「実」をつけない教示を使っているのは,,垢任砲修諒法での経験が長く,感覚的に身に付いていることがほとんどで,負け惜しみ的に,施設収容を伴う非行臨床では,教示の「実」を描くことが義務のように感じ取られる危険性があることも挙げることにしている。私の同業者に聞いてみると,やはり「実」を付けない教示を利用している人が圧倒的に多かった。
私が学生の頃,オカルトものの洋画を見ていたら,悪魔にとりつかれた主人公(子供)の親が,友人の精神科医に息子の様子がおかしいと相談するくだりがあった。その医師は,子供に会い,白い紙をとりだして樹木の絵を描かせた。そして描かれた幹の太い絵を眺めながら,「問題はない。」と親に話している場面が印象に残っている。この映画の中の医師は,短時間の面接の中でバウムテストを用いたのだった。これみよがしの悪魔の策略に,テストと面接者が負けるところが,なかなかに教訓的でもある。


<文献1>C.コッホ 『バウム・テスト〜樹木画による人格診断法』 1970,日本文化科学社。
バウムテストの基本書,入門書。サインの解釈仮説をあまり体系化せず,1対1対応で記述していないところがミソ。例えば,「落ちる葉」の項では,「すぐに発散させる。自己を簡単に表現する。感受性。感情の微妙さ。感じやすいこと。ルーズ。忘れっぽいこと。散漫なこと。おくりものをしたがる。」と解釈の可能性が羅列してある。コッホは,羅列的な表示が「表面的になってしまう」(33p)ことを恐れているが,私はかえって描画の多義性を強調できるので,心憎い方法と思っている。巻末には,補遺として,「日本におけるバウム・テストの研究」が収録され,初期の日本の研究成果が概観できる。この本の翻訳者らを中心とした研究グループが,補遺の発展版とでもいうべき,邦書を出している。量的,基礎的な研究を集めた『バウム・テストの臨床的研究』(林・一谷編,s48,日本文化科学社)と,ていねいな解釈事例の報告集である『バウム・テスト事例解釈法』(Rコッホ,林,国吉,一谷編,1980,日本文化科学社)とがそれで,後者はテストテストした丁寧な解釈で,基本的,正統的な解釈の息使いが伝わってくる。


<文献2>高橋雅春・高橋依子 『樹木画テスト』1986,文教書院。
 HTPテストの一貫として,樹木画だけを独立して解説したもの。高橋は,「時間が限られていたり,とくに知りたいパーソナリティの側面がある場合,HTPテストの形を取らないで,この中の特定の課題を描かせることも可能である。」(まえがき)と記している。
 この本の魅力は,わかりやすさにある。教科書的に内容が網羅されているし,手軽な解釈資料集として非常に使いやすい構成になっている。高橋自身が樹木画に関する「料理読本」と言っているが,まさしくそうした特徴があふれている。コッホよりも,こちらの本を先に読むほうが,何かにつけ頭に入りやすいかもしれない。
 私が樹木画を勉強しようとしたときには,先輩技官から,コッホの訳本は多義的に解釈仮説がかかれていてわかりにくいだろうから,高橋雅春の『描画テスト入門』(後出)の樹木画の項目を読むことを勧められた。明快に1対1の解釈仮説がかかれていて抵抗のある人もいるかもしれないが,あくまでも「料理読本」であり,臨床を重ねて卒業していけばよい。


<文献3>青木健次 「バウムテスト」(『臨床描画研究機ι漸茱謄好箸瞭匹瀛』に掲載,1986,金剛出版)
非常に臨床的な観点から解説されている。やや中級編的要素がある。臨床上誰もが感覚的に考えるようなことが言葉で指摘されているようで,「本当のことが書かれているなぁ」という読後感を持った。私は職場の後輩に樹木画の解説書を紹介しろと言われたときには,この論文を勧めることにしている。


| ふじかけ | 描画テスト技法辞典 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
2019.05.19 Sunday 08:49
| スポンサードリンク | - | - | - | pookmark |
Comment
name:
email:
url:
comments:
Trackback
http://fujikake.jugem.jp/trackback/66
Search
Profile
Recommend
Recommend
Recommend
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき
雨降りの心理学 雨が心を動かすとき (JUGEMレビュー »)
藤掛 明
雨の心理的イメージを鍵に、雨の降る物語を読み解く。カウンセリング論であり、人生論でもある。
Category
Archive
Latest Entry
Recent Comment
Recent Trackback
Links
Admin
Calendar
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< May 2019 >>
記事分析
アート情報
Sponsored links
Mobile
qrcode
無料ブログ作成サービス JUGEM