描画技法辞典:「家族画」
2006.12.09 Saturday 08:54
【家族画の方法と文献】
 家族画はおそらく素朴なかたちでは,人物画の変形として人物画の歴史とともに自然発生したのであろう。社会的な場を設定して描かせ,そうした場との関わり合いにおいて個人の認知を探ろうとする試みとしては,他にも学校画など多数があるが,家族画がその普及度,人気度で頂点にたつ。家族画を一つの技法としてまとまった臨床研究で示すことは,ハルセ(米)やポロー(仏)に始まるとされている。
 家族という領域が,多くの臨床家の興味の対象であることから,様々なバリエイションがある。
以下には代表的な教示法をあげる。
■「ある家族を描きなさい。」
▲「ある家族」画。DAF(Draw-A-Family)と略記する。描き手の実際の家族でなく,架空の家族像が描かれることも多い。その場合,「あなたがこの家の人ならどの人?」といった質問等が行われる。家族画としては抽象性の最も高い教示である。
■「あなたの家族を描きなさい。」
▲「あなたの家族」画。FDT(Family Drawing Test)と略記する。
■「あなたも含めて,あなたの家族の人たちが何かをしているところを描いてください。」
▲動的(動態)家族画。KFD(Kinetic Family Drawing)と略記する。ここまでの3つの家族が教示を比較すると,下になる程,より現実の相互関係に根ざした家族イメージが得られるとされている。課題から,やや抽象度を減らした方が,描き手の負担と抵抗を減らせるという私の実感によれば,この動的家族画が一番使いがってがいい。一般的な家族画教示の選択について,石川元氏がその骨子をまとめている(「描画テスト・2家族画」『異常心理学講座次戮澆垢砂駛次法
■「『私の家族』という題で描きなさい。」
▲「私の家族」画。ある時期,「家族画研究会方式」と呼ばれることもあった。日本家族画研究会(現,日本描画テスト描画療法学会)で,共同して家族画の研究をすすめるための,統一教示として採用されたもの。当時,すでにこの教示が,大阪少年鑑別所で,所長であった奥村晋氏を中心に,家族調査と臨床診断に用いられていたことから,「大鑑(だいかん)式」と呼ぶ人もいた。統計的な研究や,施設等での一斉実施に用いられることが多い。


<文献1>R.C バアンズ 『子どもの家族画診断』,1975,黎明書房。
 動的家族画の古典。児童の動的家族画の分析枠組みを,豊富な家族画作品とともに紹介している。これを日本用に修正し,またコンパクトに解説しているのが,翻訳者でもある加藤孝正氏による「動的家族画(KFD)」の論文。『臨床描画研究機戞紛盥篏佝如砲房録されている。なお,この本には,石川元氏による「家族画(FDT,DAF)と合同動的家族画(CKFD)」という論文もあり,前半部分では,家族画の歴史,実施上の留意点,解釈上のポイントが鋭く提示している。なお,描画,とりわけ家族画の実践では,個人心理的な分析を目指す場合と,描画場面での相互作用を重視し,治療のために非常に戦略的に解釈する場合とに分けることも可能で,いきおい,家族画の解釈も両者の息使いは違ってくる。石川氏は後者の立場が明確で,家族画をテストとして用いようとしている学習者が読むと,やや戸惑うかもしれない。しかし,戸惑う価値はある。


<文献2>遠藤辰雄監修『家族画ガイドブック』 1989,矯正協会。
 非行臨床を対象とした,大勢の執筆者による家族画解釈の論文集。実践と研究のための非常にお得なガイドブック。「料理読本」のたとえで言えば,様々な料理が味わえる。私のような鑑別所技官と家庭裁判所調査官が主な執筆者。ごった煮の部分もあるが,かえって解釈の視野の幅ができるし,好みの立場を捜し出す楽しみもある。ちなみに本文中に登場したヒロコ先輩や,アヤコ先生の論文も掲載されている。拝読。なお,書店では買えず,直接,矯正協会に購入を申し込む必要がある。


<文献3>日本家族画研究会編 『臨床描画研究供戞。隠坑牽掘ざ盥篏佝如
 特集が家族画による診断と治療。「家族画診断の基礎」(高橋雅春),「非行臨床における家族画」(奥村晋),「大学生の家族画」(高橋依子),「家族画(DAF,CKFD)による自殺への治療的アプローチ」(石川元),家庭裁判所における家族画の活用」(郷司幸雄),「動的家族画(KFD)による治療」(加藤孝正),「夫婦療法における動物家族画」(渋沢田鶴子・石川元)と7本の家族画の論文がおさめられている。一つ一つが骨太の実践の報告。
 こうした多様な切口の論文に接すると,家族画だけの解説書が大冊としてまとまりにくいのではとないかと感じる。理由の一つは,家族画は,バウム画などにくらべ,社会的要素が強いだけに,ある臨床領域で培った体系が,そのまま他の臨床にストレートに通用しないという感想を抱く。病院の精神障害者,老人,思春期,非行・犯罪者,児童の各臨床みな様相が違う。


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